中学生・高校生のお子様との接し方に悩むとき、どんなことに困っていると感じていますか。お子様についてのご相談は、各ご家庭みんな様々です。今回は、思春期のお子様のことや、接し方について、承ったご相談など、カウンセリングから考えてみます。
本人(子ども側)の要因
ご相談の多くは、お子様側について、お話しされます。
学校に行きたがらなくなった、親に反抗的・暴力的な態度をする、部屋にこもりがちで何を考えているかわからないなど、生活の様子から感じる行動や発言について、子どもに何か問題があるのではないかというご相談です。性格や考え方は、お子様もそれぞれ異なるので、ここでは私がこれまで感じたお子様ご本人の問題をご紹介いたします。
1)思春期の成長変化
小学生高学年頃から、子どもたちは男女共にそれぞれ体の変化が起こり始めます。背が伸びる・ヒゲが生える・月経がはじまる・胸が膨らむなど、急激な体の変化が訪れることに、子ども本人が戸惑うことがあります。
また、外見的な変化だけでなく、内面にも変化が起こります。特に生物として生殖機能の変化は、異性・同性に対する性の意識が変化することにもつながります。性的な感情が生まれ、セクシャリティーについて強く意識するようになったり、同性の親密な仲間関係(親友・仲良しグループ)が作られるようになります。このような意識の変化は、お互いの存在意義の確認や、自尊感情をはぐくむなど、成人としての人格形成に影響していく、大切なプロセスでもあります。
この生物学的な成長変化が要因となり、自分を確立できていない思春期には、大きなストレスや不安定な気分にさせていることが考えられます。
2)「自分」の不一致
上記で意識の変化について触れましたが、思春期には親密な仲間関係が作られていきます。このことについて、アメリカの精神科医サリヴァンが「チャムシップ/ピアシップ」という概念を唱えています。
チャムシップとは、グループの中で、共通点を確認したり、模倣して取り入れたりしながら、お互いの存在意義を確認でき、自分の価値・意義を見つけていける。秘密を共有したり、悩みを打ち明けることで、一体感を感じ、安心できるなど、同じ・一緒と感じることで、存在意義や安心を感じながら成長していけるということです。
この次のステップがピアシップと呼ばれるもので、成長するにつれ、相手との違いを受け容れ、認め合いながら関係性を育んでいけるように変わると言われています。
友達との関係についてご相談いただく中に、このチャムシップ(親密な関係性)が影響し、自分がみんなと違うことに、苦しさや孤独感をもつ方もいれば、焦りや怖れを感じていることがあります。まだ発達途上の子どもたちは、心のどこかで「今の自分のままじゃあかん」という思考が強く働き、自分を認めることが難しくなり、みんなに合わせたり、違う相手を非難・攻撃することで、「同じ・一緒の存在意義、安心感」を得ようとしているのかもしれません。
これまでの私が承ったカウンセリングのご相談では、子どもたち側の要因として、個人差はありますが、この時期だから生じてしまう「成長変化に対する様々な葛藤」が多いと考えます。ただ、状態によっては、医療機関など、適切な専門機関にもご相談することをお伝えさせていただくこともあります。
環境(保護者側)の要因
子どもを取り囲む環境は、「自分」を確立する成長過程に、大きな影響を与える要因になり得ます。環境には、親子だけでなく家庭(親戚含む)・学校・習い事など様々ですが、今回は承るカウンセリングの中で感じる、保護者(親)側の要因についてご紹介いたします。
1)子どもを比べてしまう
カウンセリングの中で、ご相談内容に関わらず共通して私が感じるものが、保護者の方が「比べる」意識が強いことです。整理してみると、次の3つと今のお子様を比べているケースが多いように感じます。
①周囲の同世代の子ども
②保護者自身(その世代の頃の自分)
③一般的と捉えている価値観
お子様と異なる点について、その違いが「ダメ/出来ていない/劣っている」といった評価を行ってしまい、「どうすればいいのか(=どうすれば正しく/同じになるのか)」とわからなくなり、本人(お子様)以上に、保護者が不安になってしまうというケースもあります。特に、小学生頃までは①の周囲のお友だちと比べていたものが、中高生になると、②の保護者自身と比べている場合が増えているように思います。問題となるケースの要因は、保護者の期待が大きすぎ・心配が強すぎなど、感じすぎる・こだわりすぎることだと考えます。さらに強まると「~しなければいけない、~させないといけない」と保護者が感じやすい、強い責任感、義務感、使命感にとらわれてしまいます。それを感じたお子様が、強いプレッシャーやストレスを感じ、子ども側の要因でも記したように、「今の自分のままじゃあかん」という自己否定を強めることにつながります。
カウセンリングでは、比べることが悪いことではなく、なぜそこにこだわってしまうのかを丁寧にお聴きしながら、保護者の方が考える子育てについて理解し、お子様への伝え方(コミュニケーション)についてご一緒に考えさせていただきます。
2)想いが届かない伝え方
ご相談にお越しくださる保護者の方は皆さん、とても子育てに熱心な方々だと感じます。初めて名前を考えた頃から、「こんな人になってほしい」と願いを込め、その名前をこれまで呼んでこられたのだと思います。赤ちゃんの頃は「元気に健やかに」「優しい人になってほしい」と広い意味だった想いも、成長につれ、「〇〇ができるようになってほしい」「△△学校に入ってほしい」など、条件がいくつも出てきます。それは、名前への広い意味の想いを叶えるために必要な、スキルや経験を求めていることなのですが、日常の中でいつしか想いよりも、狭い意味の細かな条件にとらわれ、そこから発信して伝えてしまうことが増えている場合があります。
これをすればいいんじゃないか、こっちはやめておくほうがいい、など条件のためのアドバイスが増えることは、受け取るお子様によっては、口うるさい・締め付けにも感じられかねません。前記1)にあげた要因、比べる言葉まで出てきて、「○○さんはこの塾に行って受かったんだから」など言ってしまうと、「わたしは○○さんじゃない」と逆に反発心が生まれることにもなります。
保護者の方のどんな想いや考え方があって、心配・反対・助言をしているのか、そのことを率直に丁寧に伝えることが、不足ぎみなのかもしれません。もし、親心がわかってもらえないことにモヤモヤとされている場合は、伝えている内容のフレームを広げ、「~な人になってほしい」など、広い意味の願いを伝えてみることもおすすめいたします。
にじいと心理相談室では、思春期のお子様や親子関係について、悩みをお持ちの保護者様・お子様向けに、親子で受けていただけるファミリーカウンセリングを承っております。お子様と保護者様、それぞれの考えや気もちを受けとめさせていただきながら、自我を形成するための大切な思春期をサポートさせていただきます。学校におけるスクールカウンセリングとも併用いただき、ご活用いただければ幸いです。詳細はメニューページよりご確認ください→ファミリー/子育てカウセンリング
