奈良県生駒市の心理カウンセリング「にじいと心理相談室」です。
『職場カウンセリング』で伺うと、ハラスメントにまつわるご相談をお聴きすることがあります。
職場のハラスメント対策は、令和4年、中小事業主を含むすべての事業主がパワーハラスメントの防止措置義務の対象となり、研修実施や窓口設置など、対応される組織は増えています。ところが、ハラスメントの発生状況として、パワハラやセクハラの相談・該当事例は、減少どころか増加傾向にあることが調査では報告されています。(厚生労働省『職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度実施)』)
今回はハラスメントの中でも、特にご相談の多いパワハラ(パワーハラスメント)について、考えてみたいと思います。
なぜハラスメントは起こるのか
承るご相談では、ハラスメントが起きる要因はひとつというよりも、様々な要因が重なっているケースが多く見受けられます。そのため、次のような悪循環が生まれやすくなります。
要因が複数ある ➡ パワハラをしている自覚がもてない ➡ パワハラ行為を繰り返してしまう
要因が複数あることで、他責になりやすかったり、周囲も気づきにくくなると、パワハラをしてしまう人(加害者)が自覚を持ちにくくなり、行為を繰り返したり、他の人も「それくらいはいいんかな」とパワハラを暗黙に肯定していることもあります。
パワハラをしてしまう人の話を聴くと、研修などで知識を持っているにもかかわらず、自分が該当していると認識できていないことが多くあります。コミュニケーションのつもりだった、熱心に指導しただけなど、悪気なく、やってしまっている行為かもしれません。次のポイントより、改めて、ご一緒に確認してみましょう。
1.パワハラに当たる行為とは?
職場内のパワハラに当たる行為とは何か、パワハラ法とも言われる次の法令から読み取ることができます。わかっているつもりでも、具体的に当てはめて考えてみると、実はわかっていなかったことが見えるかもしれません。
”事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。”
(引用:労働施策総合推進法第30条の2第1項)
ポイント①優越的な関係が背景にある
もう少し簡単に言い換えると、相手に逆らえない(反論しづらい、断りづらい)関係ということです。多くの方は、役職や肩書が相手より上位(主任、課長、リーダーなど)である場合と思われているのですが、次のようなケースも該当します。
・長くその仕事に従事している(経験スキル)
・実務に詳しい(専門性スキル)、など
「パワハラは上司が部下にするもの」と思われがちですが、赴任してきた店長に、先に長くそこで働いているパートが何も教えないといったケースも、パワハラになり得ます。
パワハラに当たるかどうか、まずは、相手との関係性はどういったものか確認してみましょう。
ポイント②業務上必要かつ相当な範囲を越えている
仕事をするために、必要なものか、その程度は妥当・適切か考えてみましょう。
時々ご相談の中で「どんな言葉を言ってはいけないのか、プライベートに触れてはいけないのか」と質問を受けることがありますが、特定の言葉だけを問題視するよりも、その内容や頻度、繰り返し状況、相手側の問題行動があるかなど、パワハラとなるかどうかは、様々な要素から考える必要があります。
パワハラを疑うご相談事例では次のようなものがあります。
・家族や交際相手のことをいつも尋ねてくる
・いつまでたっても次の仕事を教えてもらえない
・同部署のメンバーとは異なる作業をさせられる、など
コミュニケーションの一環としてプライベートの話題が出ることは自然な流れとしてありますが、その頻度や特定の相手にだけ行うことはパワハラと受け取られるかもしれません。また、業務の担当や指導手順は、本人の能力、適性のもと行われますが、偏った評価で行われたり、不必要な程度であればパワハラになることがあります。
パワハラに当たるかどうか、2つめののポイントは、その行為が仕事として必要か、適当か、客観的に説明できることを確認しておきましょう。自己判断だけでなく、第三者にも意見をもらうと、より客観的に考えやすくなります。
ポイント③労働者の就業環境を悪化させる
その言動を受けた人が、身体的・精神的な不快や苦痛を感じ、能力を発揮できず職場で働きにくくなるなど、支障がおきる状態のことを意味します。
例えば次のようなケースが考えられます
・身体的な暴力
殴る、蹴る、強く引っ張る、物を投げつけるなど
・精神的な暴力
人格否定的な発言、無視をする、仕事を与えない、無理なことばかりさせるなど
精神的な苦痛は人によって感じ方や程度は異なることもあり、理解しづらい場合も考えられます。自分の感覚や捉え方だけでなく、相手の状態や他の人ならどう感じるか、考えてみることが大切です。また、働きにくくなるということは、休職だけを意味しているものではありません。不安や恐怖から、集中力の低下、ミスの増加など、従来のパフォーマンスができなくなることも指します。休んでいないから大丈夫ではなく、日頃の様子に変化を感じられたときは、状態を確認することをお勧めいたします。
パワハラに当たるかどうか、3つめのポイントは、相手の様子を従来と比べた際の変化の有無を確認してみましょう。但し、中には不調を隠す人もいます。他のスタッフや専門家など第三者にも定期的・継続的に確認してもらうことも必要な場合があります。
2.どうしてパワハラは起こるのか?
どんな行為がパワハラに当たるかを理解することに加え、どうして起こるのか、その要因を考えてみることが、カウンセラーとしてとても大切だと考えます。職場カウンセリングの観点から、いくつかの要因をご紹介するので、ご一緒に考えてみて下さい。
1)個人の要因(しやすい人/されやすい人)
にじいと心理相談室のスタッフカウンセリングでは、大きく2つのポイントからご一緒に考えさせていただきます。個人がどんな状態か確認することで、複合的な問題や根っこの問題が見えやすくなります。
①外側の環境(職場や家庭での立場など)
②内側の環境(考え方・気もち)
①外側の環境(職場や家庭での立場・役割)
◎パワハラをしやすい人の環境
・職場の環境(抱えている仕事量や責任が多い、望む評価が得られていないなど)
・私生活の環境(家庭内で問題が起こっている、ワンオペ育児など)
・過去の環境(自分の頃はもっと叱責された、指導してもらえなかった)
◎パワハラをされやすい人の環境
・職場の環境(同世代がいない、話せる人がいない、期待されすぎているなど)
・私生活の環境(家族の事情で残業制限が自分だけある/自分はないなど)
・過去の環境(育つ環境の中で積極的な経験が少なかったなど)
過去と今の職場環境の違いや、担っている立場など公私それぞれ個人の環境は様々です。個人が置かれている環境を整理してみることで、他の問題との関連が見えやすくなります。
②内側の環境(考え方・気もち)
◎パワハラをしやすい人の傾向
・損得勘定が強い(被害者意識になりやすい)
・プライドが高い(自分が優位でありたい、他責になりやすい)
・完璧主義(~が当たり前、~すべき)
・劣等感を抱きやすい
・怒りやねたみを感じやすい、など
◎パワハラをされやすい人の傾向
・自己主張が苦手(相手に合わせてしまう)
・断れない、できないと言えない(頼まれやすい)
・ことなかれ主義(我慢してしまう)
・人との関わりに消極的(コミュニケーションが苦手)
・孤独感、どうでもいい気分になりやすい
・どうせ誰もわかってくれないと諦めやすい、など
個人の環境は、外側の環境が影響し、内側の環境傾向が強まることもあります。
例えば、
①性格傾向(何事も完璧主義になりやすい人) → ②外の環境(仕事と家庭の両立で時間に追われる)→ ③気もち(イライラ、不満、妬み) → ④他者へのハラスメント
普段から自分の考え方や感じやすい気もちの傾向を知っていれば、外と内の環境を見直す、整えることで、パワハラを防ぐことにつながります。
2)職場(組織)の要因
パワハラは当事者個人間の問題と考える人もいますが、先ほど個人の要因(外側の環境)でご紹介したように、職場環境(組織側の課題)が個人に影響していることもあります。
①組織風土
職場風土は、その組織でこれまで大切にしてきた考え方や想い、組織運営のために必要なこと、優先することなど、様々です。次に挙げたものは、以前若手の方々から伺った、変わってほしい風土の例です。
・上のひとに意見を言えない風土(目上を重んじる)
・上位者の指揮命令は遵守(絶対服従)
・超実力主義(過程は評価されず、結果のみ)
・キャリアアップや業務内容に性差がある(男尊女卑)、など
時代とともに、風土の受けとめ方、捉え方は変化してきています。良いか悪いかではなく、なぜそれが大切か、どの程度が必要か、職場全体で意識を共有し、意見を交わしながら見直す。若手からベテラン、経営層まで共に考えてみることが大切だと感じます。
②不満感・負担感の軽減対策
人口減少の時代、どの職場でも人員不足の声を聴きます。昔と比べ、設備など便利になっているものも増えてはいますが、働くスタッフの負担感は増加しているように感じられます。職場内で摩擦が起こりやすくなり、結果、ハラスメントやメンタルヘルス不調にもつながっているケースが見受けられます。
負担感や不満を解消するひとつとして、社内イベントなど取り入れられることに加え、カウンセリングや相談時間を設ける、窓口を紹介することをお勧めいたします。
③育成方針
パワハラでは、指導にまつわるご相談を一番多くいただきます。様々な職場で今、ひとりに与えられる業務量や多岐にわたる職務スキルが求められるケースが増えています。どれだけ任されるのか、期待に応えられるのか、不安を強く感じる人や、どう教えればいいかわからない、どこまで教えないといけないのか疲れるなど、指導をする人も受ける人も、曖昧な育成体制や制度は、意識のずれや感情の起伏が起こりやすくなり、パワハラにつながることがあります。先ほどの不満感も、この育成体制から生じているものもあります。
方向性や計画など、人材育成における体制を組織や指導責任者がわかりやすく示すことは、スタッフの安心や意欲にもつながります。
まとめ
今回は、パワハラについて、どんな行為が当たるのか、どうして起きてしまうのか、ご紹介しながら考えさせていただきました。
パワハラかもしれないときは・・
3つの確認をしてみましょう
①相手との関係性(逆らえない、断れないような関係)の確認
②仕事として必要性、妥当性の確認
③相手の痛み(心身)とパフォーマンス(従来と比較)の状態
※第三者にも客観的な意見をもらうようにしましょう
パワハラを起こさないためには・・
日頃から環境の確認をしておきましょう
①置かれている環境(職場や家庭など)
②心身の環境(体の健康、捉え方のクセ、気もちの状態)
③職場のあり方(組織側としてどんな職場でありたいか)
※職場内や家庭内など、日頃から話し合える時間や関係を築きましょう
パワハラ問題は、様々なケースがありますが、初めに記したように、パワハラ行為をしてしまっている本人や周囲が認識できていない場合、対象者を変えて繰り返されたり、職場組織が黙認しているような結果になってしまう恐れもあります。事態が起こってからだけでなく、日頃からパワハラを防ぐための意識を、個人も組織も持っておくことが大切です。
にじいと心理相談室では、職場カウンセリングとして、働くスタッフ個人のご相談や、人事や経営者様からの組織課題も承っております。何かお役に立てることがあれば、お問合せください。より良い職場環境、人間関係づくりを目指し、ご対応させていただきます。
